母方の母親が亡くなられました。

突然の報せだった為、
急遽、母親の実家である山口に帰ることになりました。








24日の21:23に死亡が確認されて、
あたしは生きている祖母に会うことが出来ないまま
この日を迎えてしまいました。

悔やんでも悔やみきれない。


あたしの母は
元気で、声が大きくて、まるで落ち込むことを知らないかのような
強かな女性です。


学校から帰って、
最寄り駅から家に電話を入れたとき、
母の声は驚くほど無気力な
低くて小さな声でした。









そのときは未だ、祖母は生きていたんです。











母は、体に力が入らないと云って、
食事の準備が出来てないので
買い物に行こうと云いました。


その道中で、
母の実家で祖母の看病をしている
母のお姉さんから電話が入って、
祖母の容態は急激に悪化し、
それから山口に戻ることになって、何の準備もしないうちに
祖母が亡くなったという連絡が入ってきたそうです。






そのときあたしは自室にいて、
扉と間仕切りの向こう、
密閉された空間を引き裂くようにして
取り乱し、泣く母の声を呆然と聞きながら
いろんなことを考えました。

だけど、きっとそれはどれも何の意味もないもの。










久々に戻った山口は、
田んぼや山に囲まれて
何にも変わってないみたいに懐かしい風景が広がっていました。

母の実家は山口で、
あたしも山口で生まれました。









祖母は懐かしい山口の家の一室で、
きれいな姿で横たわっていました。


あたしが生きている祖母に
最後、いつ会ったのか覚えていません。

それくらい、ずっと会ってませんでした。

だけど息をしていない祖母の顔は、
小さくやせ細ってはいたけれど、
変わってはいませんでした。











祖母はまるで眠っているみたいでした。













息、したら良いのに・・・。














本当は4月の段階で二ヶ月あるって云ってたんです。

あたしもゴールデンウィークか、
遅くとも5月中には山口に戻るつもりで・・・。

だけど間に合わなくて。





山口の祖母にはなかなか会えないから、
どうしても会いたかったのに。








会いたいときに会えないって、辛いな・・・。




















お通夜、お葬式と
慌しくなると思いきや、
何故だか二日ほど余裕があって、
海に行ったり、ボウリング行ったりして遊んでました。

祖母が眠るお棺の隣で
祖母の思い出話もしました。


笑いながら遊んでいる合間も、
誰の頭からも祖母のことが抜けなくて。








あたしは祖母が大好きで。

嫌な云い方になるけれど、
山口の祖母が、あたしは一番大好きでした。







祖母はあたしの名前をよく呼んでくれました。


あたしは三人兄妹の真ん中で、長女で、
他の祖母の間で、
兄や妹のような可愛がられ方はされなくて、
「妹なんだから」「お姉ちゃんなんだから」「長女なんだから」、
いつもそうでした。

皆が皆そうなら、
あたしはそれが当たり前のことだと思って受け入れることが出来てたと思います。

だけど、山口の祖母は
そんな風に云わなかったから。
















祖母のお棺の前で何度か泣いた所為か、
お葬式に日に泣きませんでした。






お葬式までの
お通夜を合わせた三日間は快晴で、
お葬式の日は曇り空の少雨。








あたしは空が泣いている気がして。

祖母が泣いている気がして。

泣きたいと思わなかった。









笑ってる方が良いよね。

その方が、先立つ人も安心だよね。







勝手にそう思うだけ。







だから少しだけ笑うことが出来たんです。

祖母の前で。














その日の行事が全て終わった頃、
相変わらずの曇天に、雨は降ってませんでした。






それから暗くなるにつれて、
兄やいとこにお酒が入り、
また、いろんなことで盛り上がり始めると
自然と皆に笑みが戻ってきて。









空が笑っているのだと思ったのは、
その日の夜空に
小さく星が出ていたから。







笑ってるほうが良いよね。