友が、一つの決意をしました。

あたしはその友を
ただスゴいと思って、
スゴいとしか思えなくて、
いや、
ひょっとしたらそんなコトさえ思ってもなかったのかも知れない。
暫く体が震えて止まりませんでした。










その友は変な人です。

この歳になるまで
出会ったことのないタイプの変人です。


初めてだったから、初めてなりの衝撃が大きかったのかも知れませんが。









人の出会い方って本当に偶然で、
友との出会いも、あたしが何気なく声をかけたことから始まりました。

だけど、改めて思い直してみると、
友がそう仕向けたようにも思えるのですけど。








友は、
いつもあたしが戸惑うような言葉ばかり返してきて、
それでもあっけらかんとした物言いが憎めない、
得な人です。


冗談のように本気でおかしなことを云ってくる、
本当に変な人です。






そんな友が
時折ふっと見せる違った顔。




友の言動には
常に友らしい生真面目さはありましたが、
時にそれを
何も覆い隠さず、一気にさらけ出す一面があります。




友は不器用な人。

本当は自分の素直な本音を誰かに聞いてもらいたいのに、
それがちゃんと出来なくて、
心の中にしまいながら、
一瞬だけ独り言のように呟いてみせる。






友の心の奥底にあるものを
あたしは知りたいと思いました。














あるとき、友はまた独り言のように
自分の苦悩を呟くんです。


決心が出来ないのだと。
足を踏み出すことが出来ないのだと。


ある人にとっては、
友の決意は「何だそんなことか」というようなものです。

だけど、友には大きな苦心があったことを
あたしは知りました。







進まないことに
友は後悔しそうだと、あたしは思いました。


本当は諦めかけてた。

だけど、あたしはそのまま諦めさせたくなかった。









後悔したくなかったのは、あたし。





でも・・・。




何気なく云ってしまった言葉が
友を傷付けてしまった。










歩を進めて後悔したのはあたし。

それだけなら良かったのに、
あたしは友を傷付けてしまった。













あたしは友に酷いことをしてしまった。





許してくれなくても良いから、
とにかくただ、謝りたくて。


もう駄目なんだと思ってました。

あたしは何も云うべきではないと。


これが最後で良いと思って、
あたしは「ごめんなさい」を伝えました。

あたしにとって、
「さよなら」に等しいような「ごめんなさい」。









そんなあたしを
友は許してくれました。

それ以上にあたしに言葉をくれました。

あたしの言葉を聞いてくれました。






嬉しかった。

友が許してくれたこと?





信じても良い?

またお話してくれますか?

そんな「ありがとう」を伝えたくて。










それから友が
苦心を拭い去って一つの決意をしたことを知りました。

友の決意はとても立派なものだったから。







あたしは何度、その友に泣かされたろう。

友を知ってから、まだそれほど経ってもないのに、
友の言葉はあたしの何かを揺るがして、
その度、友と話がしたくて仕方なくなるんです。









会いたいな・・・。